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WITHコロナの時に〔2〕フリーランスへの補償要請に視る
Categories: 文化・アート



新型コロナウィルスの感染者急増に伴い、日本全国に「緊急事態宣言」が発せられました。それ以前の自粛要請から、対象となった事業や一斉休校に伴う生活や仕事への影響は、計りれないものがあります。

医療機関や従事者への対策・補償が最優先であることは言うまでもありません。けれども、眼に留まりにくく、平時でも社会保障・生活補償が行き届いていない人たちにも、死活問題が迫っています。

そこでWITHコロナの時に、ウェブマガジンのたる的に必要と考えることを発信します。【宮沢さかえ】


MICフリーランス連絡会記者会見=2020年5月20日撮影=宮沢さかえ

第2回は、フリーランスで働いている人に対する公的支援(セイフティネット)に関する厚生労働省要請について、です。5月20日に厚労記者室で行われた、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)フリーランス連絡会の記者会見での発言を、補償内容ごとにまとめます。

記者会見の冒頭、MIC事務局長・岩崎貞明さんが、「フリーランス(雇われていない)で働く人への公的支援の問題については、コロナウィルスの問題が発生したから起きたというよりは、もともと潜在的に要求してきたことでもある」と前置きしました。本誌でも、その観点から報じます。各補償名のあとは、記者会見での発言者


持続化給付金申請に必要な「対象月の事業収入がわかる書類」について


持続化給付金など=協同組合 日本俳優連合国際事業部長・森崎めぐみさん

2月26日に政府の要請で公演・イベントなどの自粛が始まってから、俳優と声優を対象に3回アンケートを実施しました。3回めは開始したばかりで293人の回答の集計を中間報告します。

俳優は、ほぼ100パーセントがフリーランスです。個人事業主は雇用保険に入れないため、会社員同等の社会保障は得られません。また、原則経費は自己負担なので、特にイベントや演劇公演などのライヴパフォーマンスや開催日がキャンセルになってしまうと、無収入になるだけでなくそれまでの経費がマイナスになってしまいます。赤字になったまま2カ月半以上(記者会見当時)が経過していることを念頭に置いていただきたいと思います。

持続化給付金について「条件に合わない」と回答した人が43.7パーセント、緊急小口資金(特別貸付)は、「貸付なら借りない」が88.5パーセント(理由=仕事の再開が見込めない中で借りられない)、小学校休業対応支援金は「正規雇用者の支給額の半額設定にされたことを不公平と感じた」が88.3パーセント。申請者はゼロ(理由=申請には発注者からの指定の内容や報酬を確認できるものが必要だが、持っていない・契約をしていない・一定の指定は受けていない人が各10パーセント。簡素化希望が58.1パーセント=俳優の仕事の特殊性にマッチしていない。収入の証明については住宅確保給付金に必要な書類や公的支援の手続きに関して困ったことにも共通している)。この間無収入・50パーセント以下・新しい仕事のあてが全くないが57.3パーセント、減っているを合わせると91.1パーセント。

自粛生活で収入が得られない中、貯金をくずしたり求人が少なくなったアルバイトを探すなどして必死に生きている俳優が多い状態で、とても専門技術を維持できず復興に備えられている状況ではないことを強く伝えたい。

当日会見に出席できなかったベリーダンス連盟代表理事・山本和泉さんのメッセージ:病院に行きたくても受診を受け付けてもらえませんでした。働けなくなったら無収入になる怖さが、ずっと付きまとう仕事を20年近くやっております。コロナに罹患して動けなくなった場合、無収入で治療費を払うことに危惧を感じます。フリーランスが多い職業は、体が資本の職業が多いという現実を見据え、傷病手当金を今こそ希望いたします。


岐阜県飛騨市の「新型コロナウィルス傷病手当金」についての通知


傷病手当金=出版ネッツ代表・杉村和美さん

傷病手当金は、傷病で仕事を休んだ時の所得補償で日給の3分の2が支払われる仕組みです。フリーランスの多くが入っている国民健康保険(国保)にはありません。省令で取ることはできることになっているのですが、自治体の国保では制度を作っているところはありませんでした。

この問題については「雇用類似の働き方に関する検討会」で、フリーランスへのセイフティネット(安全網)の項目の1つとして検討されてきています。雇用保険・失業給付・病気の時の補償・出産や育児補償と一緒に検討はされてきたのですが、中間とりまとめでは急ぐ課題が出されて社会保障関係に関しては持ち越されました。まだ十分な検討がされていない状況の中で、今回のコロナウィルスが来てしまったという状況です。

「熱が出たり咳が止まらなくてPCR検査をしたいけれども受けられない」という話が出ていて、傷病手当金が支給されると良いのにと思っていたところ、3月24日に厚生労働省国民健康保険課が事務連絡「新型コロナ感染症に感染した被用者(雇われている人)等に関する傷病手当金の支給について」を出しました。国保加入者に対しても、被用者に関しては傷病手当金を支給するようにという事務連絡です。

これを発見して、被用者の中に雇用類似の人たちを入れてほしいと、まずは東京23区宛に「契約の形式が雇用でなくても実態から判断して傷病手当金を支給してほしい」という要請書を出すことにしました。それに対して「被用者枠を拡大することは考えていない」という回答を受け、4月24日に厚労省国保課に対して要望書を出しました。「給与明細ではなく報酬の請負契約などを持って行った人にも支給をするように」が主な要請でした。

厚労省が自治体に対して出した「傷病手当金支給の目的」に、「感染防止をするためには、労働者が感染した場合に休みやすい環境を整備する。感染防止の観点から傷病手当金の支給を促すことに国が緊急的な措置として、当該人が支給した費用について支給金を行うことにした」と書いてあります。

コロナ感染症は、雇用でない人は罹らないというわけではないので、この趣旨に基づくためにも私たちに被用者の概念を広げてほしいという申し入れをしました。厚労省の回答は「被用者の概念を広げるのは難しいが、これは自治体の負担でやることなので、自治体に対して個人事業主にも支給するのは可能だという通知は出す」ということでした。

2回めの要請書は、「自治体の窓口で雇用類似の人が申請に来た時に請負代金や給与委託料のような給与証明を持ってきたとしても受け付けるように言っててほしいということ、被用者だけでなくそれ以外の人に対しても自治体財政で傷病手当金を支給するというようにしてほしい。それに対して、国が財政支援をしてほしい」とさらに具体的にしました。これに対する回答は、1回めとほとんど同じでした。

ところが、5月18日に鳥取県岩美町で個人事業主等への傷病手当金がついたことがわかりました。また、岐阜県飛騨市でも、自治体の財政で個人事業主にも傷病手当金を出すことがわかりました(写真)

フリーランス・自営業に対して傷病手当金を支給することができるように、国が財政支援をすることを強く求めていきたい。自治体に対しても、独自の財政や創生予算を活用しながらフリーランスにも支給していくことが私たちの要望です。

MICフリーランス連絡会の要請書(1部)

未払い報酬の立て替え払い=出版労連事務局次長・北健一さん

まず、私たちのようにフリーランが入っている労働組合・労働団体=出版労連・東京土建・MICの仲間の音楽ユニオンなどに共通するのですが、「仕事をしても報酬がもらえない」という相談が、労働相談のかなりのウエイトを占めてきました。原因はさまざまですが、半分以上は発注主の経営難・資金繰り難に起因していてその1部が倒産に繋がり相談に来ることになります。

残念ながら、コロナ感染と世界的景気後退が重なる中で倒産が増えて行くことは確実に予想されるので、その中で報酬の未払いも増えるだろうと考えています。

雇用労働者には、未払い賃金の立替え給付があります。政府の趣旨としては「会社がつぶれた時に給料や退職金が全くもらえなくなると、労働者や家族の生活が窮するので、国が立て替え払いをして支える」。財政は、労災補償の会計です。したがって、労災保険に入っている事業者が雇用している労働者に賃金未払い・倒産や事実上の倒産の時に立て替え払いをするということです。

私たちは、雇用類似就労者もその趣旨に合うのではないかともともと考えていて、この点は雇用類似検討会でも一定の議論がされています。ある程度継続的に仕事をしていて雇用に近い場合は、特例的に国の財政措置でこの会計に別枠を設けて雇用類似就労者にも「賃金の確保等に関する法律」で未払い報酬の立て替え払い制度を実施してもらえないだろうかという要望です。

これについては、コロナ感染症についての緊急的対応としてのお願いですが、中期的な目標としては、労災補償や未払い賃金の立替払いに雇用類似就労者に近い形で働いている人も拾ってもらえないか、が私たちが考えていることです。

いろいろ課題はありますが、例えば韓国は雇用類似就労者を社会保険の対象者とする法改正を行っていています。労災補償の対象をある程度広めに取る国は、海外では結構あると聞いています。ですので、働く人の命や健康を守るということと財政的な措置とセットの未払い報酬の立て替え払いは、ゆくゆくは法制度によって、もう少し広い働き手を守る制度にしてほしいと思っています。

要請提出後の動きとそれに対するコメント=北健一さん

5月20日の記者会見で私たちは、フリーランスや芸能実演家の窮状を知らせるとともに、支援拡充を訴えました。広く報道していただき感謝しています。

日本俳優連合によるアンケートは、日本芸能実演家団体協議会による要請、文化芸術振興議員連盟による萩生田光一文部科学大臣面談と相まって、5月27日に閣議決定された第2次補正予算政府案での文化芸術振興予算(560億円)に結実しました。

国民健康保険からの傷病手当金は、UAゼンセン・民主商工会など先行する努力に私たちの声も重なって、岩美町(鳥取県)と飛騨市(岐阜県)が独自の施策として国民健康保険に加入する個人事業主などへの傷病手当金支給を決めました。私たちの要請も踏まえて厚労省は5月1日に事務連絡を出し、自治体判断で国保から傷病手当金を支給できることを周知。傷病手当金を含め住民支援に使える財源として地方創生臨時交付金2兆円が、2次補正案に盛り込まれました。自治体要請を検討中です。

未払い報酬はまだ動かせていませんが、ますます深刻化しそうな課題なので引き続き要望していきます。コロナ対応で勝ちとった施策を、フリーランスが安心して働けるルールやしくみ作りにつなげたいと考えています。

■ 日本俳優連合実態調査アンケート3中間発表
■ 雇用類似就労者就労者への賃確法を準用した未払い報酬立て替え払いについての要請書
■ 「新型コロナウィルス感染症傷病手当金創設について」(岐阜県飛騨市)
■ 新型コロナウィルス感染症特設ページ(鳥取県岩美町)
■ WITHコロナの時に