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映画紹介:「けったいな町医者」~全力で患者に向き合う医師のドキュメンタリー






まず、医者なのに白衣を着ていない。町を全力で走り回る。よくしゃべる。冗談を言う。そして、ときどき歌っている。「けったいな町医者」と呼ばれるのは、長尾和宏さん。兵庫県尼崎市でクリニックを開業するお医者さんです。在宅診療もしています。

長尾センセイの日々を記録したドキュメンタリーであるこの映画は、患者さんひとりひとりと向き合い、その その生活や家族のことも大事にして、診療にあたっている様子がありありと描かれています。



在宅診療のシーン



「センセイの顔みたら治る」―高齢の患者さんが、長尾医師を見つめて、手をにぎって言いま す。
「センセイ」も、それに必ずこたえます。そして、患者さんはみんなひとつ元気になり、笑顔になっています。

長尾医師は、過去のつらい経験があり、阪神淡路大震災を経て町医者を選んだといいます。

そんな言葉から、本来の治療とはなんなんだろう、と考えさせられます。

カラオケのシーン


この映画では、「人生の最期をどう迎えるか」という問題も浮き彫りにします。最後まで自分らしく生き抜き、安らかに穏やかに亡くなっていくとはどういうことか。家族を看取る瞬間まで、リアルに映し出されますが、それはとてもあたたかく、尊いものでした。

どんな患者も絶対に見捨てない-こんな先生が、各地域に1人でもいてくれたら、どんなに安心だろうと思います。

長尾センセイは、けったいな町医者かもしれませんが、患者から見たら、笑顔と元気をくれる正真正銘のヒーローなのでは、と思いました。

重厚なテーマを扱っているにも関わらず、とても重苦しくならないのは、長尾センセイの明るさ・ユーモアと、尼崎の人たちの庶民的な親しみやすさがあるからなのかもしれません。長尾センセイの、突き抜けた生き様に感銘するとともに、自分自身や家族の死をどう迎えるだろ うか、と考えるきっかけにもなります。あたたかい涙がにじむ作品です。【山口亜希子】




   

■ 公式ウェブサイト
監督:毛利安幸/2020年/116分/配給:渋谷プロダクション
2021年2月13日からシネスイッチ銀座で公開中。ほか全国順次
2月20日からは、長尾和宏著作が原作の映画「痛くない死に方」が公開予定