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映画紹介:「オキナワサントス~日系移民強制退去事件」
Categories: 文化・アート



(C)玄要社

「サントス」と聞くとサッカー好きの筆者は、ペレやネイマールといったスター選手が所属していたブラジルのチームが浮かぶだけでした。そんな場所で第2次世界大戦中に日系移民が強制的に退去させられていたということを知り、驚きました。

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日系移民が強制収容所に入れられたという話を筆者が初めて知ったのは、「ミリキタニの猫」(2006年・アメリカ)というドキュメンタリー映画でした。日本時間1941年12月8日(ハワイ現地時間12月7日)に日本海軍がハワイ真珠湾の米海軍太平洋艦隊と航空基地に対して奇襲をかけた「真珠湾攻撃」を契機に、フランクリン・ルーズベルト米1942年2月19日、裁判や公聴会なしに特定地域から住民を排除する権限を陸軍に与える大統領行政令9066号に署名。これが日系アメリカ人に対して強制立ち退き、そして強制収容への一連の軍事行動を可能にしました。この作品の主人公である80歳の日系アメリカ人画家=ジミー・ミリキタニは、22歳の時に集合センターと呼ばれる仮収容所や強制収容所に送られた経験を絵に描いています。


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話を本作に戻すと、サントスの日系移民強制退去事件が1943年7月8日に起こった背景には、ドイツ軍がサントス港を出航したブラジル商船をすぐに沈めてしまったことで、枢軸国の日系移民がスパイ視されたことにありました。これは、どこの国であっても戦争という極限状況に置かれれば起こります。

例えば軍人・軍属よりも一般住民の犠牲者が上回った悲惨な沖縄戦では、配置された第32軍(通称「球部隊」)を率いた牛島満司令官が1944年8月31日付の訓示の中で、「防諜ニ厳に注意スベシ」と喚起していました。また、球部隊の命令を伝える45年4月9日付の球軍会報には「爾今(じこん)軍人軍属ヲ問ハズ標準語以外ノ使用ヲ禁ズ」「沖縄語ヲ以テ談話シアル者ハ間諜(かんちょう)トミナシテ処分ス」との指示が出されています。間諜とはスパイのことで、「処分ス」というのは殺害するという意味です。つまり、ウチナーグチで話し合ったらスパイとみなして殺す、と言っているのです。幼少期に沖縄戦をくぐり抜けて海を渡ったサントス沖縄県人移民研究塾の宮城あきらさんが「集団自決」から生き残った話を語るシーンには、胸が苦しくなりました。

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そもそも、サントスには沖縄からの移民が多いという事実は、日本で沖縄の人びとが差別的な扱いを受けていたという歴史にもつながります。そういった構造に目を向けさせられると同時に、自分たちに都合の良い歴史だけを残そうとするブラジル日系人社会の闇も垣間見えました。そのような状況でも、サントス沖縄県人会が全面的に協力してくれたことにより、強制退去の体験を持つ人を見つけ出して証言を聞いていく過程は、とても貴重な記録となっています。

【前川史郎】

■ 「オキナワサントス」公式ウェブサイト
監督:松林陽樹/2020年/90・分/製作:玄要社/配給:東風
7月31日より桜坂劇場(沖縄)にて先行上映
8月7日よりシアター・イメージフォーラム(東京)ほか全国順次公開