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大恩寺ベトナム寺院を訪ねて~支援活動から見えること
Categories: 労働問題

白菜漬を作る技能実習生 撮影=1月13日

埼玉県北部で、高い山やまがよく見える本庄市児玉町にある大恩寺はベトナム仏教寺院です。技能実習生や留学生として日本に来たものの、仕事が続けられなくなったりいろいろな事情で逃げてきた人たちが暮らしています。昨年の新型コロナ5波の頃には、広間がいっばいになるほどの人たちが身を寄せていたそうです。感染者が出た時は、モンゴルゲルを設置するなど、対策はしっかり取っています。1月には常時10人以上が生活していましたが、今回訪ねる直前に帰国や就職が決まり6人になっていました。

ティック・タム・チーさん 撮影=4月8日

1月13日と4月8日に訪ね、住職のティック・タム・チーさんとファン・フィン・バオ・ニエンさんに聞いた話を、問題ごとにまとめます。

外国人技能実習生とは

技能実習生は、2017年11月1日に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(平成28年法律第89号)に基づいて実施されている制度です。厚生労働省のウェブサイト冒頭には「外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的としております。」と書かれています。

けれども、実態はどうでしょうか。冒頭の説明の下に掲載された重要なお知らせには、注意喚起などの対応についてなどが並んでいます。

十分な医療が受けられない

大恩寺では、無料で寝泊まりを提供するだけでなく、仕事のあっせんや残念ながら亡くなった人の遺骨を家族に届けることもています(コロナ禍がなければ遺族が引き取りに来ていました)。ベトナム寺院・大恩寺ができてから3年間で100人、去年だけで50人が亡くなったそうです(実際にはもっと多いと思われる)。この内コロナ感染症で亡くなったのは1人で、後は過労やがんの手遅れによる死亡です。

ベトナムには50~60歳の人には保険がありますが、それ以下の人にはないため医療費は全額本人負担。このため風邪などは薬局で薬を買って治すことが多いとのこと。日本に来て仕事に付ければ会社で保険に入りますが、国民健康保険に入る人はいません。病気をこじらせてから病院にかかる人が多いのも死に至ってしまう原因の1つです。

私が1月に訪ねた前日にも、500万円の医療費を請求されたケースの交渉にチーさんが行って来たとのこと。「ディスカウントできた」と、医療費には似つかわしくないことを話していました。兄が負担することになったそうてすか、支払いは厳しいことでしょう。

日本には無料低額診療制度がありますが、日本人にもあまり知られていません。1月に訪ねた時と、その後訪ねた医療機関団体から説明と病院の紹介をしています。

訪問者に話をするファン・フィン・バオ・ニエンさん(本棚の右側)
撮影=1月

手元に残る給料はわずか

「ベトナムで『給料は17万円』と聞いたら毎月17万円もらえると思います。でも、日本では保険や部屋代・食費が引かれて3万円くらいしか残らない。そこから仕送りをしたら5000円くらいしか残らない人もいます」とニエンさん。生活が苦しいこともありますが、日本に来るために借金をしている人は、帰りたくても帰れません。

ベトナムは土建業がさかんで、技能実習生のほとんどがこの業種です。そもそも土建業は労災発生件数が多いのてすが、多重請負などで労災対象とならない場合も多いのです。医療に関しては、無料・低額診療を利用するなどして、早めの受診で重症化や死に至らないようにする必要がありそうです。
労災と認めれば医療費負担はなくなり、休業補償もあります。「労災は会社との関係で難しい」とニエンさん。労災を申請することを会社が嫌がることは、日本人労働者に対しても同様に起きています。労災申請をしていくことも、問題解決の1つになることでしょう。

振る舞われたベトナム揚げおにぎり

訪問者からのお米の差し入れ

支援が必要

大恩寺が行っている7つの支援=食糧・人道(相談)・供養・帰国(成田までの無料送迎)・仕事斡旋・浄園(畑)には、お金が必要です。物質的な支援は多く寄せられているようですが、資金面でも支援が求められています(例えば支援物資送料減額や助成など)。

大恩寺を訪ねた2回とも、いろいろなきっかけで出会い繋がった人が訪ねて来ていました。支援が広がっていることを感じましたが、元は国の事業や制度で日本に来た人たちです。公的補償・支援が受けられるようにすることも合わせて必要だと考えます。【宮沢さかえ】

「外国人技能実習生について」(厚生労働省)