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まるこのワタクシ流展覧会見てある記(4)池田20世紀美術館「片岡昌展」
美術館入口

美術館入口。撮影=すべてまるこ

 伊豆・伊東市の一碧湖。その周りには洒落た別荘やレストラン、カフェが建ち並びます。そこの一角に池田20世紀美術館という現代美術館があります。現在は片岡昌展が開催されています。

 片岡昌氏の作品とは、以前「のたる」でも紹介した埼玉県越生市の山猫軒で約10年前に見たのが最初の出会いでした。この時の展覧会は、氏の作品群のなかでも反戦の意の込められた「埋もれし時」というシリーズの人形展でしたが、この人形達を見た時から私は片岡昌作品のファンになりました。

 それから追っかけのように、片岡氏の所属する「人形劇団ひとみ座」の人形劇や人形展をあちこちで見ています。大規模な展覧会となった今回は、片岡氏のこれまでの作品がジャンル別に見やすく展示されています。

片岡昌展 最初のコーナーは、これまで多くの観客に見てもらった人形達がひとみ座の倉庫さながらに並んでいます。 それぞれ首から吊るされて、しかもぎっしりと並んでいるものですから、人形といえども少々不気味な感じです。

 今回の企画展から感じられたのは、片岡氏の人形は、総じて愛玩物というイメージではないということです。私が魅かれるのはまさにその点で、片岡氏の造った様々な人形達を見ていると、人間の肉体と精神の内部に対する片岡氏の鋭い観察眼、そして厳しい批判の眼を感じ、尚且つ人間に対する愛とユーモアを感じます。

 とてもグロテスクに感じる人形もありますが、どの人の心の中にも存在する、ドロドロとした本音の気持ち―嫉妬、羨望、性欲、食欲―それらがユーモアという糖衣を着せられていますから、本当は自分自身の内部のドロドロとした部分を見せつけられているのだけど、それらを感じないで劇を観賞できるのだと思います。

  有名なひょっこりひょうたん島の人形、その中でも一見美しい「ルナ」、それが一瞬で顔が魔女のように変身する事を覚えている方は多いでしょう。 昔、子供心にこの変身する様を、怖いもの見たさでいつ変わるか変わるかとドキドキしながら見た記憶があります。

倉庫のように並んだ人形たち 天主物語の「舌長姥」も同じです。 腰の曲がったおばあさん(舌長姥)が、血と聞くと突然顔が裂けて長い赤い舌がズズズッと開いた口から出てきて血をなめる真似をします・・人形とはいえ、ゾゾッとします。

 この、恐ろしいもの、醜いものを本当は見たいという密かな欲望をかなえてくれる「毒」の要素を持つ、ちょっぴり怖い人形劇。各登場人物の性格の本質がそのまま表わされたような人形に造られていて、魅力的です。

 人形劇用ではない、その他の「怪奇と幻想展」、「人形動物園」シリーズの人形(立体作品)にも十分にこの「毒」がもられていて、見ていて飽きません。

 

大きい頭蓋骨のモニュメントもそうです。不気味だけど、これは私達の肉をはぎ取った姿でもあるのです。

 

                    片岡昌展

 そして、少し趣を異にした、「埋もれし時」のシリーズ、これは戦争で一家の若い主人を失った家族はその時から時が止まってしまった、というイメージで作られた人形群です。 今回はその中でも比較的新しい戦時中の庶民をかたどった人形が展示されています。

                   

                   片岡昌展

  展覧会カタログに載せられたキュレーターの熊谷薫氏の論によれば、 片岡氏は若くしてひとみ座に入り、劇団用の人形を作る仕事をしつつ アート(芸術)の世界に入られたので、所謂画壇とか、そういう権威の あるところとは別の世界で作品を自由に思うままに制作してい るそうです。尚且つ、常に観客に見てもらうという視点があり、狭い自 己満足の世界に陥らずに制作出来るために多くの人たちの共感を得られるのだということで、私も確かにそうだと思います。

 この展覧会は、その片岡氏の歩みと魅力のエッセンスが十分に楽しめる展示となっています。10月まで開催されていますので秋の伊豆を楽しみながら訪れてもいいでしょう。【まるこ】

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■片岡昌展 ――超次元アートと『ひょうたん島』――

 池田20世紀美術館

 2010年10月5日まで開催