ウェブマガジン・のたる編集長が、ペルシャざくろジュース(株式会社 小糸)のウェブサイト内の宣伝コピーや商品紹介ページを担当することになりました。記事を更新後に、のたるにも掲載していきます。ご愛読いただければ幸いです。第一弾は、社長インタビューです。
――なぜざくろジュースを販売しようと思ったのですか?

チャドルを着た株式会社小糸社長・嶋田由美子さん
嶋田社長:バブルがはじけた、1995年のことでした。当時、ギャラリーを借りてペルシャ絨毯を販売していたのですが、口コミでのお客様も来なくなって、さてどうしようと思っていました。好きな国だし、言葉も勉強したのでイランとこのまま縁が無くなるのも寂しい。
そう思っていたら、現地のイラン人が「私が知っている人に会ってみますか?」と言って、ナール・イランの会社に連れて行ってくれました。テヘランから120キロメートル南下したところにある砂漠の中にその会社の工場がありました。
そこで驚いたのは、とても清潔だということです。私は、以前印刷会社をやっていましたので、機械にはとてもうるさいです。中級の機械を買うと中級の仕事になってしまうので、機械だけはお金をかけて、工場の中もきれいにしていました。「こういう所からは良い仕事ができる」と思っていました。
ナール・イランでは、みんな白い服を着て、トラックから運んだ物を何回も何回も洗っていて全部がすごく清潔でした。ざくろを潰すときのフィルターも4層になっていて、カスが全く残らないようになっています。
でも、その時は写真だけ撮ってきて、日本に帰ってから大手食品系会社の人に話してみました。ところが、「ザクロは、『人の肉』と言われて育ってきたからなあ」との返事でした。考えてみたら、私が疎開していた袋井市の家にざくろの木があったのですが、誰も食べなかったんです。
その理由は、”昔、精が付く物が無い時代にお年寄りが子や孫に食べられないようにそう言って来たという謂れがあり、私の子供時代は落ちている実を拾って食べようとは決してしませんでした。お年寄りは、落ちた実を焼酎につけておいて毎晩飲んで体や骨を痩せさせないで丈夫を保ち、血液の流れを良くして年老いても子どもの世話にならないよう暮らしたそうです。
――あまりイメージが良くなかったざくろのジュースが、なぜ飲まれるのでしょうか
嶋田社長:老舗の香料会社の社長の息子さんが東京農大を出ていると聞き、話をしたところ、一番に「ざくろの濃縮?ぜひやってみたい」と言いました。彼は、まだ誰も言わない時に「エストロゲン=女性(卵胞)ホルモン」に言及していました。

――大変でしたね。その後どうやって挽回したのですか?
嶋田社長:その時には注文がいっぱいあったので、原料を私が買ってしまいました。そして、「小糸のブランドで良いものを作る。他社製品のように、高い値段にはしない」と決めました。行商をしてでも、自分だけで売ると。
おかげさまでたくさん買っていただきましたが、実を言うと赤字なんです。今は、1本1500円ですが、以前は1000円で売っていました。そしたらイランの社長が、「僕から買う方が高いじゃないか」と言いました。でも、その時にすでに買っていた分はこのままで行く、次に買う時には考えることにしました。
すると、イランから「4種類のざくろを揃えてやろう」と言ってくれました。それでも、あまり高くはできませんので、1500円にしました。本当は、2000円くらいにしないと儲けは出ません。その代わり、私が生きている間は今の値段でやってほしいとお願いしました。500円の値上げで離れて行ったお客様もいらっしゃいます。
――その後の売れ行きはどうですか?
今年の1月1日から3日間、イランがミサイルのテストをするためにホルムズ海峡が封鎖されました。そのために、昨年12月に原料が乗った船が出航出来ず、ジュースの生産が滞ってしまいました。毎日飲んでいる方がそれでさらに離れてしまいました。
さらに、今回からは20パーセントの値上げを言われています。そうなると、さらに値上げをしないとやっていけない状況ですが、私1人で店頭とインターネットで経費をかけずにやって行こうと思っています。宣伝費もかけずに(笑)。
それでも、もっともっと大勢の方に続けて飲んでいただきたいと思っています。女性だけでなく、男性にも続けて飲んでいる方がおられます。
ジュースの質を落とさずに値段据え置きでやっていきます。【2012年8月16日 写真・文=宮沢さかえ】