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映画紹介:「朝日のあたる家」~真実を知ろうとする人たちの地道な努力が通奏低音に

 

(C)「朝日のあたる家」

(C)「朝日のあたる家」

 

この世の中には多くのタブーがあることを、2年半前の3.11が見事にあぶりだしてくれた。

そのうちの1つ、権力を握っている王様に「裸だよ」と言ってはいけないという事。みんなが危険であるとわかっているのに、「あなたは安全です」と言えば身は安泰、お金もくださる。でも、「あなたは危険」と言えば、言った本人が危険になる。

しかし、あの地震・津波に続く原発事故の大参事とその後の解決されない多くのことごとが、そのタブーを白日の下にさらけだした。「あなたは本当に危険だったのだ」。が、そのタブーを口に出すのは勇気のいること。山本太郎は口に出し、芸能界を干されてしまった。

 

(C)「朝日のあたる家」

(C)「朝日のあたる家」

 

太田隆文監督は、原発の映画を作ろうとしたがスポンサーが全くつかなかった。原発映画というだけで、「止めとけ」という意見。しかし、真実を見定めた市民がぞくぞくとカンパを申し出て、1000万円の資金が集まり、山本太郎と反原発に賛同する俳優たちがこの映画に出演した。

だがまだタブーは生きていて、上映する映画館が見つからない。しかし監督自らの宣伝活動が市民を動かし、新聞やツイッタ―でこの苦境が公にされると、とりあえず全国13カ所で上映が決まった。これもあれも、すべて市民1人ひとりの力。あの惨事を「我が事」と認識した人びとがこの映画を作り出し上映に至ったのだ。

ロケ地は静岡県湖西市。同市の三上元(はじめ)市長は、脱原発首長会議のメンバーだ。浜岡原発から60キロにある湖西市は、福島県飯館村と同じような位置関係にある。危機感を強く持つ市長がロケ地の協力を申し出た。市長のみならず、市民も大勢エキストラで出演した。

浜岡原発ならぬ山岡原発が大地震で被害を受けて放射能を撒き散らす。しかし、国は安全と言い張り、真実を伝えない。そして、主人公一家にいきなりの避難指示。避難所を転々とし故郷を家を仕事を地域の繋がりを友達を失っていく人びと。帰宅して家族との生活と仕事を再建したい父親が1人で家を除染するが、追い付かない。いくら除染しても、山から森から放射能は流れてくる。家と家畜を奪われた隣人が首つり自殺をしてしまう・・・・・・。

 

(C)「朝日のあたる家」

(C)「朝日のあたる家」

 

全て、これは現実に福島で起きている現在進行形の物語。フィクションながらも、真実に忠実な作り。いや、これはノンフィクションだと思って観たほうがいいかもしれない。「福島で、静岡で、こんなにも同じような事故が起きたのだ。だから、いつこのような地震による原発事故が起きて自分に降りかかって来てもおかしくない。」と思って私たちは生活するべきなのだ。

しかし、原子力発電は国策故え、国は失敗をひたすら隠し安心・安全の空しい花火を次つぎと打ち上げているように思える。

ドーンと一発。9月9日に「東京は安全」として東京オリンピック2020年招致成功!同じ日に検察は、福島原発告訴団の告訴・告発において、東電と政府関係者を不起訴とした。
9月11日に、福島を含む東北の被災者の9割がまだ仮設暮らし。福島7市町村で除染終了時期が不明の記事。
9月13日、福島の汚染水問題で東電と政府の見解の違いが明らかになる。
9月14日、イプシロン打ち上げ成功。
9月18日、リニアモーターカーの新駅決定、開通予定2027年!

華やかな花火の輝きと灰色の現実が交錯する。しかし、こんな打ち上げ花火に迷わされるほど市民は愚かではないと信じている。この映画を作り上げたパワー、2年半続く毎週金曜日の反原発集会。その様子はこの映画の中にも取り上げられている。そうした真実を知ろうとする人びとの地味な努力が、通奏低音のようにこの社会に脈脈と流れていることは確かだと思う。

最後に監督の言葉と山本太郎の言葉を紹介する(映画資料より)。

太田隆文:親子に伝える大切な事を自らのテーマとしている、原発事故の真実を伝えたい、しかし、そうしたら次の仕事は来ないぞと言われる、ならば、この作品を遺作にする!原発事故はどれほど残酷なものか、放射能で汚染された故郷には何十年も帰ることが出来ない。思い出も家族の絆もすべてを奪われてしまうのだ、そのことを伝えたい。

山本太郎:真実を知ることが出来ていない人たちにも、もしかしたらこの作品を通して原発事故の悲惨さが疑似体験できるのではないか、一刻も早く皆さんに見てもらって、同じことを繰り返してはいけないよという共通の認識になればいいなと思います。

【川越やよみ】

      

■ 「朝日のあたる家」公式ホームページ
渋谷・UPLINK他全国各地にて9月28日より公開
監督・脚本:太田隆文/118分/製作:青空映画舎・「朝日のあたる家」を支援する会/配給:渋谷プロダクション