ウェブマガジン・のたる
核絶対否定~「ガタロ絵画展」―ヒロシマ 美しき清掃の具―
Categories: 文化・アート

 

ギャラリー古藤

 

ギャラリー古籐(練馬区)で「ガタロ絵画展」が行われています(27日まで)。去年たまたま見たNHK・ETV特集「ガタロさんが描く町」を見て非常に興味を持ちました。

ガタロ(本名=福井英二)さん(64歳)は、被曝2世。高卒後いくつかの仕事を経たのち、現在広島で清掃の仕事しながら絵の制作をしています。NHKプラネットディレクター・仲間英敏さんが広島勤務の時にガタロさんを取材して出来た番組です。それを見た武蔵大学教授・永田浩三さんが感激し、ギャラリー古藤のオーナーさんとガタロさんを訪ねました。その後、実行委員会を立ち上げてこの展示が実現したのです。

 

ガタロ展

 

画廊の入口左側壁面には、「飯」シリーズが7点。鉛筆か木炭のような画材で力強く描かれたお椀と、それを大事に包み込むように持つ手。一杯の温かいお椀の食事は、どんなに愛おしく大切なものか。この7枚の絵からひしひしと伝わってきます。

 

続いてS氏の肖像画が12点ほど。S氏は、ホームレスの友人です。職業に貴賤は無いというのは大いなる建て前で、そこには厳しい労働の実態があります。ピラミッド構造の社会の底辺で黙々と仕事をしている人びとの力強さ・逞しさ・哀しさがS氏を通して表されています。

 

ガタロ展

 

壁面右側には、清掃人・ガタロさんにとって大切な作品のテーマでもある掃除道具の絵=「棒ずり」と題した作品が5点。床を掃除するデッキブラシやモップの事ですが、そのタワシの部分を大きく描いた作品や、固く絞って乾いて固まってしまったような雑巾。すべてあまり色を使わない白黒の作品は、敢えて言えば素描と言えばいいのか。しかし、凄い迫力があります。先ほどの「飯」のように見る人を惹きつけて、有無を言わせないほどの迫力です。

広島原爆ドームの図は、5点ほど展示されています。ガタロさんは、この原爆ドームを1年間毎日描き続けたり、原爆慰霊碑前での座り込みに参加したこともあります。

 

ガタロ展

「豚児の村」

 

正面には、1985年作で翌年のチェルノブイリ事故や、2011年の福島事故を彷彿とさせる約3m×2mの大作「豚児の村」。イサム・ノグチが広島市内に制作した平和大橋の手すりの部分が中心に大きく描かれ、その右には福島第一原発から赤黒い汚染水が漏れ出ています。その下には、白っぽい1匹の太った豚が腹に赤黒い班を見せている。まるで、被曝して皮膚が赤黒く変色したように見えますが、その皮膚には米吉と言う文字が書いてあります。これは福島原発事故後加筆されたもので、その言葉の意味が添えられていました。

「これは福島第一原発事故の後に、描き加えたもの。TPPで大きな問題となっている『米』、原爆を投下し原子炉を導入させた『米国』、経団連のトップ『米倉氏』への批判の思いが込められている。」

 

54個の穴が開いたオブジェ

54個の穴が開いたオブジェ

 

また、この作品の脇には赤黒い大きな丸い張り子のようなオブジェがあり、それにはボコボコと月のクレーターのような穴が開いています。穴は全部で54個。そう、これは原発の数です。このオブジェの意味は、「福島原発事故のあと、ガタロさんはこのオブジェを自ら頭からかぶり原爆ドームの前に立ち原子力文明への抗議を示した。数分後警察によって排除された。」と解説されています。

全作品、画材は決して高価なものではないし、額縁も実行委員会のメンバーの持ち寄りだという事です。しかし会場作品全体から受ける印象は、丸木位里・俊の有名な「原爆の図」と同じくらい、力強くたちにに訴えかけてきます。会場のテーブルには、ガタロさんの言葉を書いた紙がいくつも置いてありました。

この社会、トップを支えているのは広い底辺の人びと。しかし、底辺の人びとの仕事は殆ど陽に当たらない場所、つまり人びとの目に触れないか、もしくは見えない・見ようとさえされない場所なのでは。朝早い時間に掃除をするガタロさんも、例えば福島第一原発で今現在働く作業員も。しかし、彼らがいなければこのピラミッド型社会は保てない。そしてそこにある様々な問題、それをわかっていながら正面から見つめようとしない私たちに、その事実から目を背けるな、と作品は語っています。【文・写真=川越やよみ】

 

ガタロ展

■ ガタロ絵画展

ギャラリー古藤 東京都練馬区栄町9‐16 電話:03-3948-5328

2014年1月14日(火)~1月27日(月) 11時30分~19時

ギャラリー古藤Facebookページ

スペースナナ 横浜市青葉区あざみ野1-21-11  電話:045-482-6717

2014年1月29日(水)~2月9日(日)2月3・4日=休み 11時~18時