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蠟燭集会と大統領選挙~その後何が変わったか(韓国)
Categories: 文化・アート

 

朴槿恵(パク・クネ)元大統領のスキャンダルは、財閥中心の経済構造の問題はもちろん、歳月(セウォル)号事件・最低賃金と非正規労働の問題・検察をはじめとする権力機関の横暴・サード(ミサイル)配備問題をはじめとする外交問題など、今の韓国社会のあらゆる問題に対する不満が爆発するきっかけとなった。

 

パク・クネ前大統領と財閥との関係を風刺する造形物

 

2016年10月29日から毎週土曜日にソウルの光化門広場で開催された蝋燭集会は、軍事独裁政権を倒した1987年の民主化運動より大規模で数カ月間続いた。何よりも市民の怒りをよく見せてくれるのは、ソウルだけでなく全国各地で大規模の蝋燭集会が開催されたことである。さらにパク・クネ元大統領と彼の父親であり独裁者であった朴正煕(パク・ジョンヒ)元大統領の故郷である、大邱・慶北(デグ・ギョンブク)地域でも蝋燭が燃え上がった。ここは、韓国で最も保守的な地域でもある。

 

歳月号事件に対する市民の怒りは蝋燭集会の重要な背景となった

 

パク・クネ大統領の弾劾を要求する大規模の集会は、ある日突然始まったわけではない。2015年パク元大統領の労働改革に反対し、民主労総が主導して始まった民衆総決起は、2016年初め頃まで4回にわたって開催されたが、当時国定教科書の問題とかみ合い、数万人の市民が一緒に参加することになった。大規模なデモを主催したという理由で、最終的には民主労総の委員長が拘束された(現在も刑務所で服役中)。

 

2016年冬、光化門広場を埋め尽くした市民

 

「パク・クネを拘束しろ」(ハングル表記)という意味の造形物

 

 

蝋燭集会は、2016年10月から17年4月までに計23回にわたって開催された。2016年12月3にちには、全国各地で232万人の市民が参加して歴代最大規模の集会となった。この集会に力づけられて12月9日、国会で弾劾案が可決された。市民の自発的な参加のエネルギーはすごかった。集会の開催費用を賄うため、諸市民社会団体が合計1億ウォン以上の借金を負うことになったのが知られた2日後、多くの市民が自発的に募金を通じておよそ9億ウォンを集めて渡した。

 

消えない火=スマフォキャンドルの登場。ハングル表記=下野せよ

多くの市民が、自発的に様ざまな象徴物を作って路上に持ち出した。水と食べ物を分け合い、青年たちは夜明けまで残って広場を掃除し、革新系の人物であるソウル市長はソウル市の公共施設のトイレを夜遅くまで自由に利用できるように開放してくれた。母親たちはママ友と一緒に、中学生や高校生はクラスメイトと一緒に、青年たちは非常に多様なグループを介して広場に出てきた。労働組合はもちろん、政府の財閥中心政策に不満を持っていた中小企業の社長や管理者・自営業者たちも街に出た。土曜日の夜には急な仕事がない限りみんなが広場に 出てきた。

 

憲法裁判所での弾劾決定の瞬間(出所:JTBC)ハングル表記=パク・クネ大統領弾劾決定

 

17年3月10日、多くの市民の懸念を払拭させて、憲法裁判所は裁判官8人の全員一致でパク大統領罷免を決定した。重要な理由は、「大統領の地位と権限を乱用」、「民主主義の原理と法治主義の精神の毀損」であった。パク元大統領と関連人物たちは拘束されて、裁判を受けている。

この後間もなく、大統領選挙が5月9日と確定された。加えて、共に民主党(民主党)では、前回の大統領選挙に出馬してパク・クネに惜しくも負けた文在寅(ムン・ジェイン)さんが再び候補として選ばれた。保守政党はパク・クネ元大統領の側近を排除し、新たに再編された。他のすべての政党は、より革新系に近い政策を提示することになった。逆に、保守政党は生き残るための戦略として明らかに右翼である候補を選んだ。日本では、民主党の候補選出過程で話題になった李在明(イ・ジェミョン)城南(ソンナン)市長が「韓国のトランプ」として知られているが、これは事実とは異なる。あえて言うなら、彼は韓国のバーニー・サンダースに近い。真の韓国のトランプは、保守政党である自由韓国党の大統領選挙候補であった洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏である。彼は、選挙運動期間中にずっと労働組合を攻撃した。

 

仁川国際空港を訪れたムン・ジェイン大統領(中央右向きの男性)

 

「労働と民主主義のある国」をもとに当選したムン・ジェイン大統領は5月12日、就任後初の外部日程として「国内最大の公共部門の非正規職事業所」の1つである仁川国際空港公社を訪れ、「公共部門の非正規職ゼロ時代」を宣言した。仁川空港公社側は、非正規職1万人を正規職に転換すると発表した。

 

最低賃金1万ウォンと非正規職の縮小(ハングル表記)が、今の労働運動の最大の課題

 

非正規職縮小など「質の良い雇用」の創出に向かって、政府の労働政策は大転換を進めている。このような変化に応じて、18年間労使政委員会に参加を拒否していた民主労組も、新しく作られた雇用委員会に参加することを表明した。雇用委員会の最優先課題は、非正規労働と最低賃金である。労働運動側は、「やっと何かができる条件が整った」と見て、歓迎とともに態勢を整備している。【金直洙=韓国・社会公共研究院研究委員】