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映画紹介:「STAR SAND-星砂物語-」~星砂に込めた監督の謎・意味とは
Categories: 文化・アート

 

つくづく思う。私は学校で日本の歴史の、一体何を学んできたのだろう。特に第2次世界大戦後だ。

太平洋戦争の開戦・原爆落ちる・ポツダム宣言受諾・終戦(敗戦ではない)、そして終戦後の日本の沖縄の状況・・・米軍による占領とその後の返還。その言葉面の裏には、一体何があったのか。教科書には載らない戦争の、沖縄の苦悩を現在の日本人のどれほどが認識しているのだろうか。

 

© 2017 The STAR SAND Team

 

この映画は、ベトナム戦争を嫌いアメリカを去ったロジャー・パルバースが2012年に日本語で書いた小説の映画化で、本人が監督も務めている。

「星砂」は生物の殻で星の形に見えるのでそう言われる所以だが、映画の冒頭、主人公の16歳の少女が澄んだ海中でこの「星砂」を掬い取っている。そしてつぶやく―私はどうしてこんな戦争中に星砂なんか取っているのだろうー透明な澄んだ海と海底の星砂とこのつぶやきこそ、ラストシーンで私たちは気がつく。大空を架ける無数の星で出来た天の川-つまり星砂の川が互いに敵国である日本と米国を結ぶ橋になって欲しいという監督の願いに、である。

 

© 2017 The STAR SAND Team

 

戦争末期、1945年5月の沖縄。遠き海を隔てたある小さな島で、もともとこの小島に隠れていた軍を脱走した男=岩淵隆康は、船から逃げ出してこの浜に流れ着き倒れていた米兵=ボブを救い介護する。そして戦争とは無縁に見えるこの島に1人で暮らし、たまたま星砂を浜に取りに来た16歳の娘=洋海(ひろみ)は彼らに出会う。娘は日系米人の母を持つため英語を解し、戦争を忌み嫌う2人の脱走兵の通訳もした。そして彼らは、狭い洞窟の中で次第に心を通わせていく。

しかし、そこに足を負傷した脱走兵の兄がかくまわれることとなる。軍国主義の教育を叩き込まれた兄は、弟を国の裏切り者で恥だと信じ、敵国への憎悪がボブに向けられ、決して心を開かない。

閉ざされた空間の中でひっそりと息を潜め、隠れ住む3人の男たち。殺し合う悲惨さに傷つき、そこから逃げた自分を瞑想の中に救おうとする隆康、明日をも知れぬ異国の地で洋海に心惹かれるボブ、あくまでこの脱走兵2人を憎しみ続ける兄。戦いのシーンは無くとも、3人の体からは戦場の硝煙の匂いがする。そして彼らは、自分が生き続けることは無いと知っている。

 

© 2017 The STAR SAND Team

 

2016年、1人の女子大学生・志保が教授から卒論の資料としてある資料を手渡された。全く戦争にも沖縄にも興味の無いこの女子学生が、そこからこの洞窟の中の4人の男女の息の詰まるような日々と彼らの悲劇の結末の謎を解く事となる。

映画は1945年の戦時中・1956年の占領下の沖縄・2016年の夏、の3つの時代区分から成る。全編を通じて沖縄戦の悲惨なシーンは出てこない。それどころか物語の主な舞台は静かに波打ち寄せる岩浜と、その岩浜にあるガマを想起させる岩窟の中である。戦争の悲惨さが描かれた場面は島の女=儀間が体験を洋海に赤裸々に話す箇所だけである。

また、唐突に入れられたようにも思える1956年の場面では、米兵2人がこの洞窟の中に3つの土饅頭を見つけ、その中の1つの土饅頭の前に置かれた日記と小さい写真や星砂が入った瓶を見つけ出す、これだけだが静かに打ち寄せる波の音だけが響くこのシーンからも、沖縄がアメリカに占領された状況がしっかりと伝わってくる。

 

© 2017 The STAR SAND Team

 

人種や価値観が違っていても人は分かり合える、分かり合える努力をすれば分かり合え戦うとか殺し合うなんて無駄だという事を、志保のような戦争を知らない若い世代は知り感じて欲しいと、「星砂」=「星砂の天の川」は映画を見る私たちに手渡されたのである。尚且つ、最後の去りゆく2人の姿に、監督が「星砂」に込めた謎・計算されつくした深く重いその意味を解く事が出来るのである。【川越やよみ】

 

     

■ 映画「STAR SAND-星砂物語-」公式ウェブサイト
監督:ロジャー・パルバース/2017年/日本・オーストラリア/110分/制作 Hara Office/Soul Age/配給:The STAR SAND Team
全国順次公開中
劇場情報は、サイトでご確認ください