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監督インタビュー:「レディinホワイト」大塚祐吉監督
Categories: 文化・アート

 

「猛毒フレッシャーズ女子による社畜解放のすゝめ!」とのキャッチフレーズが付いた、映画「レディinホワイト」の大塚祐吉監督インタビューです。【2018年11月1日、東京都内にてインタビュー=前川史郎・写真=宮沢さかえ】

――試写会で観た時に、すごくライトな感じに笑いながらも、社会にどう適応していくのかという部分で「自分らしさとしての服装が能力とどう関係があるのか」と入社試験の面接で男の子が言っていたのがすごく印象に残りました。監督は、働くことと個性というものを、どの程度の割合で両立させていくことを考えたのか教えてください。

大塚祐吉監督

大塚祐吉監督:どの仕事もそうだと思うんですけど、能力のない人は淘汰されていくような時代だと思うんですね。でも、当たり前の話ですが、外見というものは人が最初に見るものであって、そこがあまりにも個性的すぎるとなかなか難しい問題が起きる社会だとも思います。特に日本はある種の統一感みたいなものが求められますし。我われはこういう仕事をやっているので、服装の部分では自由ではありますが、やっぱり服装というのは最初に誰もが持つ先入観であるでしょうし、「この人はこういう人なんだろうな」ということを外見から判断されるのは、どこの業界でも一緒だと思います。でも、それと能力は全く別物として考えています。

――主人公の女の子(吉本実憂演じる如月彩花)がリクルートスーツのことを「喪服」と言っていたのが笑えました。主人公のキャラクターが実際にいたらぜひ会ってみたいのですが、やっぱりいないんじゃないかと思うんですね。リアルさという点ではどのように考えてらっしゃいましたか。

大塚監督:僕のいとこが帰国子女で、ずっとフランスにいたんですけが、日本の会社に就職するという時に、予備知識がそこまでなくて、いきなり面接で色いろ言われたらしいんですね。でも別に突飛な格好をしていたわけじゃないんです。彼が言っていたのは、その時にアルマーニのスーツを着て行ったらそれを指摘されたらしくて、批判に対してすごくアンチな考えに変わって、次の面接に行った時には逆にからかってやろうと、麦わら帽子にアロハを着て行ったらしいです。ちなみに彼は、新聞社で働いてます(笑)。

前川史郎:就職活動は、日本特有のものがありますよね。

大塚監督:そうですね。やっぱり画一化されたスタイルみたいなもので、そこから外れること自体もう団体行動やチームプレイの中に入れない人間だと見なされる部分はあると思います。

前川:そういう日本社会の風潮というか特徴というところに監督としてはメッセージを込めたという風に見てもいいのでしょうか。

大塚監督:僕がどうこう言って変わる社会ではないと思うんですけど、こういう問題提起も映画の中であったら面白いんじゃないかということですね。

――劇中にはかなり笑いがたくさん散りばめられているのですが、もし自分が経験したらと想像した時に、あんな上司や「エコノミックアニマル」や「奴隷」という言葉が当てはまるような会社で働かされていて、血尿が出たりとかは嫌だなと思いました。でも実際にブラック企業と呼ばれるところで今もそういう働き方をさせられている人も多いので、身につまされる観客もいるのではないかと思います。

(C)テレビ大阪サービス

大塚監督:もう家を買ったら終わりだと思うんですね。どういう状況であろうが一生返済するために生きていかないといけないという選択肢しかなくなります。日本の経済は今そんなに良くはないですけど、もともと資源がない国でどうやったら他の国と競ったり生産性を上げられるかというシステムが、長年かけて作られたものとして存在しています。企業で働く人は、その部分の歪みをダイレクトに受けると思うんですね。組合があったとしても、そこまで闘えない組合もたくさんあると思います。その苦しい状況の中でそれを笑えるぐらいの余裕がある人がどのくらいいるのかなというのはありますが、決して茶化しているつもりはないです。

そういう中に主人公の女の子みたいな子が入ってくると、ある種ブラックユーモアではあると思いますが、笑える部分もありますし、自分を茶化してなんぼのものみたいな余裕が生まれればいいなと思っています。

それは日本の映画界も一緒だと思うんですね。組合があるわけでもないですし、やっぱりアメリカの映画界と比べると、雇用面・契約面に関しては、先進国でありながらとても低レベルです。映画文化に関しては、国もそうですがかなりよくない待遇を受けているんです。もちろん映画が売れないからそういう風になっているという部分もあるんです。

――出演のみなさんは演技がすごく良くて、うまい役者をピタッと当てはめてたなと思ったのですが、当て書き(前もって配役を決めて書く)されたのですか。

大塚監督:それは、まったくないです。役者が合わせてくれました。

前川:キャスティングは成功されたと思いますか。

主人公・如月彩花=吉本実憂さん
(C)テレビ大阪サービス

大塚監督:脚本が1番なんですけど、それをどういう風に表現してくれるかは役者次第で決まってくるので、みなさんすごくうまくやってくれたと思います。

前川:演出をつけるのは大変じゃなかったですか?

 

大塚監督:吉本実憂さんが1番大変だったと思います。リハーサルを1週間ぐらいやりましたが、もともと真面目で劇中に出てくるような人ではまったくないので、すごく振り切ってくれたと思います。

――タイトル「レディ in ホワイト」は、主人公自身が白い服を着てホワイト企業に勤めたいという願望を持っている中で、放り込まれたのが真逆の環境だったというコメディですが、タイトルに込めた思いを聞かせていただけますか?

大塚監督:たまたま彼女がホワイト企業で働きたいとか、白い服を着ているというだけなんですけど。

前川:私は観ていて、やっぱりホワイト企業ばかりで自分らしく働けるという社会だったら、過労自死などの社会問題も起こらないのだと思いました。

大塚監督:あっ!なぜこのタイトルにしたか思い出しました。ある映画のマスコミ試写の時に、その時の宣伝部にある批評家が、僕のスタイルが監督らしくないというようなことを言ってきたらしくて、その宣伝部の人にすごく怒ったんですね。「じゃあ僕が服を変えたら映画の評価が上がるのか」、「然関係ないじゃないですか。宣伝部が批評家に媚を売ってどうすんの」みいな話になって、これ「レディn ブラック」という作品だったら多分そういうふうな話だったと思います(笑)。外見と僕が作った作品の出来・不出来はまったく関係ないのに、そこを批評家からいちいち指摘される覚えもないし、「なんでそれで服装を変えないといけないの」ということがありました。

前川:話を聞きながらリンクしたのがマイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」でした。コロンバイン高校で銃の乱射事件を起こした犯人がマリリン・マンソンを好きだったということから、マリリン・マンソン好きはみんな銃の乱射事件を起こすのかというムーア監督の問題意識と似ていると思うのですが、全然関係ないところから揶揄されるのは本当に心外ですよね。

大塚監督:僕はその時、本当に関係ないだろうと思ってましたし、言った人誰だと宣伝部に聞いても名前を教えてくれないんですよ(笑)。

前川:そういうことが今回の作品を撮る時のエネルギーになっているかもしれないですね。

大塚監督:あまりにもくだらなすぎて、多分ネタにしているんだと思います。

――凹んだ主人公が歩いている時に、飲み屋から汚い水をかけられて服が汚れるシーンがありましたが、白という色が純潔を想起させますし、それが汚されるということから観客が想像するものもすごくわかりやすいと思いました。観客に1番感じて欲しいことはなんですか?

大塚監督:最悪な状況でいかにして楽しむかということですね。日本の社会で生きていくには、相当タフじゃなきゃいけないと思います。勝手なことをやったらすぐに叩かれますし、人とカラーが違うとヤバいし、主張するとまた大変なことが起きますし。

前川史郎(右)

前川:SNSが当たり前になっている今、すぐに「炎上」したり、以前とは明らかに違う時代になっていますよね。またインターネットの普及に伴って、どんな年齢であっても画面上は同じ文字なので、匿名でものすごく攻撃的な言葉を浴びせられる世の中になっているので、本当にタフさが求められますね。

大塚監督:そうですね。主人公はそういう時代で生きている子ですけど、自分からあえて悪役を買って出てきて、「私叩けばいいじゃん」ぐらいの勢いで来てるのは面白いなと思います。常に叩く対象を探している中で、彼女はもってこいの存在だと思いますし、それにめげるような子ではないので。

――この映画をどんな人たちに観てもらいたいですか。

大塚監督:できれば映画好きの方に観てもらいたいと思います。もしかしたら「別にテレビでもいいじゃん」と言われる部分はあると思うんですよ。映画館で観る・映画でなければいけなかったという部分は、他の作品と差別化されると少ないのかもしれないですが、映画でなければやれなかったところもいくつかあるので、そこを楽しんでもらえればいいなと思います。

前川:役者の皆さんの演技が振り切っていたので、気持ちよく観られたということが私自身にとっても収穫でした。本当に。多くの人に観てほしいと思います。

大塚監督 キャラクターの1番バカな部分は、僕が投影されていると思います。吉本さんは、それに合わせてくれたんでしょうね。ふだんは全然違うタイプの方なので。

前川:吉本さんのファンは、違う側面を観られるという部分でお得感みたいなのがあるんでしょうか。

(C)テレビ大阪サービス

大塚監督:たぶんそうじゃないかな、と思います。(これまでの役どころが)ああいうキャラクターではないと思うので。この役をやりやすくするために吉本さんのことを茶化しまくってます。

前川:そういう気配りをしてもらったことで、吉本さん自身もやりやすいと感じられていたのかもしれませんね。

大塚監督:素晴らしいと思います。彼女が置かれているふだんの環境などから考えると、相当頑張っていると思いますし、もしそれを感じさせずにお客さんに見ていただいているのであれば、うまくいったなと思います。

前川:「自分らしくやっていいんだよ」と背中を押してもらえるような作品だと思うので、就職活動の時に「なんでこんなことをしないといけないんだろう「と思っている学生さんたちにもぜひ観てほしいなと思います。

大塚監督:そうですね。どうせ年をとったらみんなと一緒にならなきゃいけないんですから、若いうち、勢いがある時に楽しんでおいたほうが絶対にいいと思います。

 

■ レディinホワイト公式ウェブサイト

11月23日よりユナイテッド・シネマ アクアシティお台場、ミッドランドスクエアシネマほか全国順次公開