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『戦争は秘密から始まる』出版記念トーク@ロフトプラスワン
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4月28日にロフトプラスワン(東京・新宿)で行われた、『戦争は秘密から始まる』(合同出版)出版記念トークのもよう(抜粋)です。取材から大分日にちが経ってしまいましたが、安保法制案の国会審議が始まり、いよいよの時が来ている時にぜひ掲載したく、まとめました。【取材=宮沢さかえ】

 

左から:新崎盛吾さん・日比野敏陽さん・日下部 聡さん・雨宮処凛さん

左から:新崎盛吾さん・日比野敏陽さん・日下部 聡さん・雨宮処凛さん

Ⅰ部:秘密保護法の狙いは?

日比野敏陽(京都新聞・新聞労連前委員長):なぜこの本を作ったか?=記者クラブは、談合をしていてよろしくやっていると追及されるが、「そんなことはない。地方の記者は頑張っている」ということを集めようと、企画した。もう1つは、秘密保護法のバックグラウンド=公安警察の裏側を知っている青木 理さんにインタビューをして構成することにした。

日下部 聡(毎日新聞大阪本社社会部):情報公開について=2013年に、警察が顔認証のリストを作成した。このリストを登録したカメラを向けると、登録者がピックアップできる。これを警視庁や5つくらいの警察で配備したということを記事に書いたということを本に載せた。

戦争は秘密から始まるトークこれは、組織犯罪者・容疑者だけに使うと言っているが、ルールができていない。記者やデモの参加者などを登録して、使用される可能性がある。全部公開されている情報で書いた。情報公開制度を利用すれば、かなりのことがわかる。けれども、秘密保護法は、ベクトルが全く別の方向の法律。

情報公開制度は、民主主義の基本。主権者・納税者が、役所の書類を見られるのは当然だということを支える根幹の制度だと思っているが、秘密保護法と情報公開法がこれからどうなっていくか、ということに興味を持って取材している。

雨宮処凛(作家):感想=秘密保護法の大きな目的にテロ対策があるが、原発や橋などの建築物以外にもあらゆるものが対象になっていく可能性があるということなど、私が知らなかった角度のことも書かれていて、秘密の範囲が広がって行く可能性があることがわかった。

共謀・教唆・先導が罪になるとすれば、それは私の仕事のようなものなので、言論を封じ込められる感じがした。

取材者の委縮や市民の監視などをすると大変なことになるという空気を作るのではないかと思う。震災以降、デモなどに参加するようになった人に水を差すのに1番効果的な法律なんだという気がする。

 

左から:新崎盛吾さん・石井 暁さん・青木 理さん・雨宮処凛さん

左から:新崎盛吾さん・石井 暁さん・青木 理さん・雨宮処凛さん

Ⅱ部:公安警察

雨宮:北朝鮮に行った後、拉致被害者との関係などを探りに公安が来た。その人と接触したとされるジャーナリストと一緒に行ったと勘違いされたようだ。

新崎盛吾(新聞労連委員長):よど号事件の頃は、犯行メンバーは良くないが(その)子どもたちには罪はない。子どもたちを救おうという論調があった。それが、2002年9月の日朝会談以降はガラりと変わって北朝鮮に行くと、捜査を受けるような構図ができた。

青木理(ジャーナリスト):今でも、拉致問題が何とか解決しないかと思い続けているが、あれ(日朝会談)が戦後日本社会のいろんなものの分岐点だったのかなあと思います。この10年くらいの日本の社会を形作る、1つの大きなきっかけになったのは間違いないだろうと思う。

戦争は秘密から始まるトーク石井 暁(共同通信編集委員・防衛省担当):北朝鮮が日本に対して何かやればやるほど、保守政権が強気に出る=自衛隊の警備強化する。

青木:簡単に言うと、日本の公安警察はヒマ。例えば、ドローン事件(首相官邸の屋上に不時着した件)など、どうでもいいのにあれだけ大騒ぎをするのは、公安も担当記者もヒマなのだ。それと直接関係があるわけではないが、内閣情報調査室(以下、「内調」)というのがある。秘密保護法の事務局としてやったのが、内調。

内調は、内閣総理大臣・内閣直属の情報機関という位置づけだが、実際には多分200人くらいしかいない。だから、大した情報収集はできないが、トップは必ず警備・公安警察関係の部署の官僚がなる。調査員の1番多くは、やはり警備・公安部門の警察官。日本の法律は大体事務方が作るので、秘密保護法は事実上公安警察が作ったもの。「安倍政権が作った」とか「安倍政権は許せない」と言うが、実は民主党政権の時に最初の形を作った。

内調あるいは警備・公安警察が、ずっと前からほしくてほしくてしかたがなかった法律‐1980年代には、スパイ防止法を作りたかったが、さすがにそれはできなかったが、安倍政権だからできてしまった。皮肉を込めて、自虐的に言えば「良いおもちゃを与えてしまった」ということだと思う。

 

戦争は秘密からはじまるトーク

 

Ⅲ部:防衛問題

宇佐美昭彦(東京新聞社会部):おそましいのだが、空襲をするにしても毒ガスを撒くにしても風向きや天気は必要だし、湾岸戦争・イラク戦争の時も気象情報は、攻撃の直前(前日や当日)にシャットアウトされて、外国には流れされなくなる。日本でも、過去の戦争開戦後は一般市民に知らされていた天気予報自体が消されてしまった。天気図も載らない。大地震の被害の状況や、起きたことすら知らされない。

軍機(軍事機密)保護法は明治時代にできて、その後改正されてなんでもかんでも機密にできるように拡大解釈されるようになったそうだ。それを考えると、特定秘密保護法で今すぐ天気予報がなくなるわけではないが、今後どのような拡大解釈が行われるか非常に心配だし、僕ら新聞記者がちゃんと取り組んでいかなきゃいけないんだろうなと思う。

天気は、基本的に軍事情報の側面を持っているので米軍絡みの情報などもある。この法律が及ぼす裾野は広くて、一般の記者にとっても公務員全体の口が重くなるという意味では、すごく影響が出てくるということを思って、この本の1部を書いた。

青木:「新聞記者ガンバレ」と言ってもらっているが、僕は頑張れないと思っている。秘密保護法が施行されてから、基本は変わっていない。いつ変わるのかというと、多分いわゆる有事の時だと思う。

安倍政権の方針で行けば、いずれ自衛官に死者が出る。あるいは、テロが起きるかもしれない。その時に、新聞は一色になる。抵抗をしようと思っても、無理だと思う。特定秘密保護法が、本領を発揮する時だ。

戦争は秘密から始まるトーク石井:航空自衛隊那覇基地(民間空港と共用)の写真。中国の飛行機が飛んできて、F15戦闘機がスクランブル(緊急)発進する現場で、パイロットがコックピットに入る所。特定秘密保護法が施行される4日前に撮影した。

現場に付いた時から、カメラを設置した側に向けて防犯カメラが動いているのはわかっていた。その内自衛官が7人くらい来て、「何を撮っているか」と聞かれた。その後、基地内に警備隊員と装甲車が来て押し問答をしている内に地元警察署員に囲まれた。その時に撮れたのが、この写真。

元もとの写真の狙いは、戦後70年・日中対立の最先端を記事に書いて写真を撮ろうということだった。後から自衛隊員幹部に聞くと、この時のできごとは特定法秘密の対象になるだろうということだったので、いかに現場取材として法律と隣り合わせにいるかということが実感できたということを話したかった。僕らはギリギリのところで取材をしなかったら、この職業をやっている意味がない、と覚悟を決めている。

石井:情報提供者への影響(秘密保護法施行前の事例から)=政府が、過去の秘密漏えい事件で唯一100パーセント当てはまると言っているのが、2005年5月30日の読売新聞の朝刊に掲載された、中国潜水艦の火災事件の記事。大した大きさの記事ではないのになぜ問題になったかと言うと、潜水艦の型と艦番号が記載されていること。これに対して、米軍が「なぜわかるんだ」と怒った。

米軍が、この潜水艦が港を出てから偵察衛星でずっと追っていた。艦番号まで知っているのは米軍しかいないのに、海上自衛隊に渡した情報が新聞に出てしまった。このことで、海上自衛隊員は書類送検をされたが、不起訴処分になった。ただし、その過程で懲戒免職処分になっている。

読売新聞の記者は、家宅捜索もされず一切おとがめがなかった。ただし、新聞社も事態を重視した。なぜかと言うと、記事にはなったけど情報源を守れなかったから。これは、新聞記者としては即失格。それで、海外特派員になるはずだったところを急遽地方支局に送って、事件が片づく前に編集部門ではないところに配属させた。

私は、特定秘密保護法で逮捕されるのは良いが、会社が家宅捜索された場合に、完全に情報源が出てきてしまう。パソコンなどを押収されたら、情報源を守れない。権力側は、別に記者を有罪にしなくても逮捕しなくても良い。ガサ入れすれば情報源がわかって、流した方も流された方も終わりだ。だから、特定秘密保護法は怖いということを私は言いたい。

青木:警備警察は、逮捕して裁判で有罪にならなかったら敗北。ましてや、無罪になったら大恥をかく。公安警察は、無罪になっても起訴できなくても構わない。あるいは、ガサをかけるだけでOK。

特定秘密保護法は何が秘密かわからないので、明らかに秘密であろうこと以外のことについて、慎重になってしまうことになると思う。

石井:僕は、自分が逮捕されることは構わないけれども、情報元が退職せざるを得なくなった場合に退職金を払うことはできないし、家族に対して償うことができない。だから、絶望的になっている。

 

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