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コミュニケーション力育てる作文教室「文聞分」の課外授業

 岐阜県各務原市にある作文教室「文聞分(ぶんぶんぶん)」。教室ではもちろん、勉強としての作文指導をおこないますが、毎週日曜日に授業とは別の楽しい課外授業がおこなわれています。教室に通う子どもから大人まで、異年齢の生徒が集まってはじまる外遊び・工作・料理。そこで育まれるコミュニケーションが子どもたちにもたらす影響とは-。主宰する高田浩史さんに教室の活動を報告していただきました。 【のたっふ=編集部】

 「文聞分」の特徴は子どもから大人まで異年齢の生徒が集まるところ

高田浩史さんプロフィール
大阪大学環境工学科卒。愛知県庁で環境行政に6年従事後、乳児の子育てと家事をしながら名大教育学部で学ぶ。卒業後、高校教師に。2008年12月に作文教室「文聞分」を開く。教室の傍ら、主夫業と、夫婦関係や子育てについての講演・執筆活動も行う。各務原市男女が輝く都市作り審議会委員。大阪生まれの熱血阪神タイガースファン。

 私は岐阜県で、本を読んで議論をしたり、作文を書くことを通じてコミュニケーション力を育む教室を主宰しています。授業を補完するものとして、毎週日曜日に、教室に通う小学1年生から大人までの異年齢の生徒が集まる機会を設けています。そこでは、鬼ごっこやドッチボールなどの外遊び・オセロや将棋などのゲーム・工作や料理・私が手料理を振る舞う誕生日会やクリスマス会など、様々なことをしています。

 最近の子どもたちは、異年齢の人と交流する機会があまりありませんが、こうした機会を通じて、子どもたちは大きく成長します。大人にも、子どもたちと触れ合うことで元気が得られると好評です。

 この活動の一つとして、6月5日(土)に河川環境楽園(岐阜県各務原市)へ出かけ、フォレストアート作りのイベントに参加してきました。なお、河川環境楽園とは、国営公園や県営の水族館、環境教育プログラムなどが利用できる施設です。フォレストアートとは、森に落ちている小枝や木の実を使って、自分だけの小さな森(オブジェ)を作るものです。

  「文聞分」課外授業 6月5日(土)場所:河川環境楽園

出発前にみんなでお弁当作り

河川環境楽園に到着後、入り口で記念写真を撮りました

フォレストアートを教えてくれる先生の話を聞きます。みんな真剣です

フォレストアートに使う材料を集めます。たんぽぽの綿毛を飛ばしたり、小さな虫を見つけたり、みんな大はしゃぎです

部屋に戻って作品作り

それぞれの子が、個性豊かな作品を完成させました

 昼食後、私は抱っこや肩車をせがむ子どもたちを順番に抱っこして、鬼ごっこの鬼もさせられることになりました。帰る時間になり、「もっといたい」「まだ帰りたくない」と口々にさけぶ子どもたち。また来ることを約束すると、ようやく帰り支度をしてくれました。 後日、子どもたちにフォレストアート作りのイベントに参加したことを作文に書いてもらいました。
「先生がいっぱい抱っこしてくれてうれしかった」
「先生やみんなと遊べてうれしかった」
「先生が遊んでくれてうれしかった」
「みんなでおにぎりを作れて楽しかった」
など。私としては、もっと、フォレストアートについて書いてほしかったのですが、子どもにとっては、私や異年齢の子とのふれあいが一番心に残ったようです。

 教室に通う子どもたちの多くは、いわゆるおとなしい子です。家では話すことができても、知らない子や、学校のクラスでは、溶け込むのが苦手です。実は、今回のイベントにも、来たくても来られない子が何人かいました。
 そんな、おとなしく、引っ込み思案な子が、コミュニケーション力を向上させ、前向きな積極性を持つには、自分が受け入れられていると実感できることが大切です。その実感が持てたとき、子どもたちは、本来の自分を出し、明るく積極的になることができます。

 それは、大人も同じなのですが、何事にも関心があり、どんどん物事を吸収できる時期にある子どもたちに、本来の力を発揮させてあげることはとても大切です。
 通常、小学生になると、抱っこや手をつなぐことを求めることは、あまりありません。でも、好きな子にわざといじわるをする子がいることは、みなさんも心当たりがあるでしょう。

 私の教室に通い始めた子の多くは、最初のうち、背中から乗りかかってきたり、カンチョーなどのいたずらをしてきたり、ここが痛い、怪我したから見てなどと、私の注意を引こうとします。いわゆる、好きな子への反応と同じです。そして、お菓子を食べたい、料理を作ってほしい、これはきらいと、要求も限りがありません。
 当初は憎らしく感じることもありますが、交換ノートを交わし、ときには料理を作ってあげ、悪さをすると本気で叱り、怪我の手当てをしてあげたりするうち、私はどの子も心からかわいいと思えるようになります。

 すると、子どもたちは、抱っこや手をつなぐことをしばしば求めてきます。中腰になって、子どもたちと同じ目線で話し、子どもたちのスキンシップの求めに応じているうちに、子どもたちはどんどん明るく積極的になっていきます。

 最初は私にくっついて離れられなかった子が、徐々に、スキンシップを私に求めることなく、みんなの輪の中で元気に遊べるようになるのです。そうなると、学校での様子も変わり、保護者の方から「学校の先生に『お子さんが急に明るくなられて驚いたのですが、何かされましたか』と聞かれたので、『文聞分に行ったからなんです』と答えたんですよ」などと、うれしい報告をいただいたりするようになります。

 「先生がお父さんだったら良かった」。子どもたちに何度も言われた言葉です。私の存在は、二番目の家庭のようなものなのでしょう。お母さんという安全基地から離れて、学校でものびのび振舞えるようになるには、かなりのステップアップが必要です。そんな子どもたちに、私は、家庭と学校の中間的な存在として、橋渡しのような役目をしているのかもしれません。

子どもたちからのお手紙とプレゼント

 保護者の方からは、「先生は、子どもに対等な存在として接してくださっているようで、話をするのがとても楽しい様子です」との言葉をよくいただきます。旅行のお土産や、庭で取れた野菜、読まなくなった本を寄贈していただくことも多く、これほど保護者の方から協力していただいている教室はないのではと感じています。  5月の私の誕生日には、たくさんの子どもたちが、お手紙やプレゼントを持って集まってくれました。多くの子どもたちのお手紙には「先生、大好き」というメッセージが添えられていました。小さな子どもたちが、「いつも先生が教室をきれいにしてくれているから、今日は私たちがきれいにするの」、「先生、こんなにきれいになったよ」と、張り切って掃除をしてくれる姿を見ていると、うれしくて涙が出そうになりました。

 生徒の声からはじまった「文聞分」の取り組み

けん玉大会で

 実は、様々な取り組みを行うようになったきっかけは、子どもたちや大人の方の声です。「先生に遊んでもらいたい」「先生と交換日記をしたい」「料理を作ってほしい」「けん玉大会やオセロ大会をしてほしい」などの子どもたちの声。そして、私のエッセイの読者や講演を聞いた方からの、「子どもたちと一緒のクラスで良いので、先生に習いたい」という声。
 そんな声に応えているうちに、今のような教室の形ができました。  効率が優先され、ドライな関係が良しとされる昨今、授業時間以外に子どもたちと遊ぶ時間をわざわざ取ったり、子どもから大人までが参加する様々なイベントを行っている私の教室は、かなり特殊なものだと思います。
 でも、この教室の活動によって、子どもたちが活き活きし、もともとおとなしかった子が、どんどん積極的になってきています。

 今朝、「先日、下の子が一緒にドッチボールをして遊んでもらった者ですが、上の子も合わせて、そちらへ通わせていただきたいのですが…」と電話がありました。私が息子とボールで遊んでいたとき、一緒に入れてほしいとやって来た男の子のお母さんでした。

 年齢的に、子どもたちとの外遊びは体力的に厳しくなってきた私ですが、大学生や大人の生徒の助けを仰ぎながら、これからも、子どもたちが楽しみながら成長できる教室でありたいと思っています。子どもから大人までが楽しく学べる場が、各地にもっと増えることを願いつつ。

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■生きる力をつける学びの教室「文聞分」