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著者インタビュー『男おひとりさま術』中澤まゆみさん(後編)
Categories: くらし

備えあれば憂いなし?~おひとりさま生活の工夫(実践)あれこれ

――『男おひとりさま術』を読んで、女性・男性に関わらず「人生の終わり方」をどうするか? ということではないかと私は感じましたがいかがでしょうか

中澤まゆみさん

中澤まゆみさん
ノンフィクションライター
雑誌編集者を経てフリーランスに。医療、福祉、介護関係の取材、単行本の構成・編集も数多く手がける
撮影=塩田涼

中澤:この本は別に男性だけに向けて書いたわけではないんです。たまたま路線的に、男に必要な視点で組み立ててはみたんですが、中身としては特に働いている女性はまさにこんな感じですよね。

 最期について自分で選択するということは、最初は多分医療辺りから出てきたのではないかと思うんです。生前から、「チューブにつなぐのはやめてください」などの意志表示をしておくことなどは、生命倫理の流れやインフォームド・コンセントなどと一緒で、自分の死後のこととか意識がなくなった時のことをどうしたら良いのかということを考える人が少しずつ増えてきたということではないでしょうか。

 それから、臓器提供のことだったり。その辺から死がタブーじゃなくなってきたことが1つ大きいんじゃないかと思います。そうすると、自分がどうやって生きて行ったらいいのだろうかということをぽつぽつ考え始めたんじゃないかと思うんです。そういった本もずいぶん増えてきていますし。

 だから、そういう流れの中で、「エンディングノート」なども出てきたわけですし、前回作った『おひとりさまの法律』は、例えば遺言書のことなども書きました。1つ、私自身が介護をしているんですけれど、人1人の命を預かっていることから、自分自身も考えなきゃいけないことがいろいろ出てきたんです。医療をどうするのかとか、介護をどうするのか。あるいは、認知症の人の生き方、どうしていったら良いんだろうかとか。

――そういったことは、自分が元気なうちはなかなか考えないですよね。

中澤:考えないもんです。ただ、60歳すぎるとだんだん頭の隅にあるもんなんじゃないかな。それで、なんかの機会にふっと考えたりすることが増えてくると思うんです。

――私も脳出血で半身不随になった友人の世話をすることになって知ったことが多かったのですが、父の時にとても役に立ちました。

中澤:両親の介護などを含めながら、自分の死、老後などを考えて行くようになっているものなんですよね。それはきっと女性の方が真剣に考えると思います。

――それは、生き方の計画を女性の方が立てている、見通しを持っているというこでしょうか。

中澤:いや、逆に計画を立てていないからフレキシブルなんだと思うんだけど。男性の場合は、例えば会社でずっと生きてしまって、両親の介護があったとしても奥さん任せになったりするわけですよ。大体汗かいているのは奥さんの方ですよね。そういう中だとあまり学習がないんじゃないかという気がするんだけども。

 それで、かなり多くのことが「自分が仕事をして給料を稼いで家に持って帰っている」というとで免罪符になるということもあるんだと思いますよ。自分が働いているんだから、家のことはおまえが全部やれよとか、自分の両親の介護も、「僕は忙しいから君やってよね」とかね。

――介護休暇を取るのもほとんど女性ですよね。

中澤:新聞に載るくらいだから男性が取ることは少ないのでしょう。

――でも、これからはそうも言っていられないですよね。

中澤:そうです。樋口さんって造語が得意な人なんだけど、「だんかい」を「男介」って男の介護を「男介の世代」って呼んでます。私たち団塊の世代くらいから、男も介護をせざるを得ない状態になってきていると思うんですよね。実際に介護をしている人もたくさんいますし、かなりボロボロになりながら。

――介護サービスに従事する人も男性が増えていますよね。

中澤まゆみさん中澤:そうですね。面白かったのは、私は思い立ってヘルパー2級の講座を受けたんです。その時に、39人のうち16人が男性だったんです。なおかつ6人くらいが60歳以上の定年組だったの。それは、普通の学校ではなくて、高齢者福祉事業団の講座でちょっと安かったということもあったかと思うのですが、それだけ男性が入ってくるのは珍しいと言っていました。

 定年になってから、自分の両親の介護を通じてとか結構資格を取る人が多いと聞いています。ただ、使い物になるかどうかというのはまた別ものなんだけど、かなり増えてきているんじゃないかと思います。自分の両親のために使いたいとか、実際にやらなければならない時期に来ているとか。

――それぞれが、自分の生き方や直面していなくても考えるということはとても大切なことですよね。

中澤:あとは、定年後の居場所ですね。とても大きな問題になってくると思うんですけれども。

 地域デビューができないとかね。この本には、男性は3回捨てられるって書いてあるけれども、実は4回じゃないかと思うんです。最初は家族に捨てられて、次に会社に捨てられて、妻に捨てられてというのが入って地域に捨てられるになるのかなと。入り方がわからないということもあると思いますが。

――そういう時に、この本が役に立ちますね。

中澤:ちょっと考えるきっかけに。かゆい所に手が届くように書いたのは、「ここに手がかりがりますから、ここから糸をたぐって入ってくださいね」ということです。1つ2つ事例を載せて、この人たちはっこうやりましたということを載せたつもりなんです。

 行政のサービスは、自分でやっていかないと向こうからはくれないんです。ただ、たくさんあるので、使っていかないとダメだと思いますね。私は冗談で言うんだけど、「行政はうどんである。叩いて練れば上手くなる」

 この間も、熱中症で亡くなった方がいましたが、男性は助けてって言えないんですよね。女性はわりと助けてってすぐ言っちゃったりするんだけど。でも、男性が言えないからこそこういう本が必要だと思います。

――中澤さんが必要事項を書いたカードを財布に入れて持ち歩いておられるということ、また私は「エンディングノート」(最期の時のための覚書)にも感心があります。おひとりさまへの具体的なアドヴァイス・「いざというときの備え」についてお聞きかせください。

中澤まゆみさん中澤:例えば、最近増えてきているようですが、病歴などを 記入したカードを冷蔵庫に入れておくという方法があります。ただしこれは、消防と組んでいないと、いくら冷蔵庫に入れておいても宝の持ち腐れなります。

 町が音頭を取って、消防と提携して。そして、特に一人暮らしの家を中心にやっている所がここ1年でずいぶん増えていると聞いています。

 このことは、NHKの朝の番組で取り上げられたんですが、たまたま私がゲストとして呼ばれたときで、北海道の取り組みを紹介していました。「これはすごく良いわね」という話をしたのですが、すごく反響があったそうですもともとは(東京都)港区が始めたんですよね。

 それから、自分で持つ小さいカードのことは話す機会があると紹介するんですが、結構持っている人は多いですね。「紙に書いて入れてある」と言うと、「ああ、カードにすればいいんだ」と言われます。私はいつも財布の中に入れています。

――でも、財布の中にこうやってカードを入れている人がいると知られないと見てもらえないのではありませんか?

中澤:でも、緊急の時にはいろいろ荷物を調べますよね。保険証なども調べますから、近くに入れておけば目に入ると思います。私は、ドナーカードも一緒に入れてありますから。

――どんなことを書いておけばよいのでしょうか。

中澤さんカード中澤:今はエンディングノートなどでもインターネットでダウンロードできますから、カードでダウンロードできるものはないだろうかと調べたんです。そうしたらなかったの。それで、インターナショナルなネットワークを持っている医療サービスのを参考にしました。

 記入する内容は、住所・氏名・年齢・既往症・服用薬・アレルギー反応・血液型・手術歴・健康保険者番号・かかりつけ医(名前・電話番号)・緊急連絡先です。事故に遭った時などにこの中で一番必要なのは、血液型とアレルギー反応なんです。それだけでももし入っていれば、既往症などは後からでも大丈夫です。

 これ、結構書き込めるんです。両面を使えばかなり書けます。そして、パウチ(ビニールコーティング)していますが、差込式のカードケースなどもありますから、そういうものに入れておけば何かの時には役に立ちます。

――エンディングノートもかなり知られるようになりましたよね。

中澤:そうですね。あれは、3部構成になっていまして、やってきたことのメモとかして、一番最後に「私が死んだらしてほしいこと」を書くんですよね。最近は看取りに近い人は結構意思を伝える人が出てきています。そういう教育が増えてきているので、自分もやっておいた方が良いと思う人が増えてきているのだと思います。

――いざという時になって、その場で判断するのは困難ですので、事前に知っておくことは必要なことですね。

中澤:私たちもいろいろな知識を積み重ねていくことがとても必要なんじゃないかと思うんだけど、この本でも病院のことや病気のことを書きましたけれど、少し知っているだけでずいぶん違うということがたくさんありますよね。

――医師に対して自分の意思をきちんと伝えることや、医師がどれだけ聞いて対応してくれるかということも大きいですね。

中澤:来所目的とか、どんな症状かを手短に言えるように予め用意しておくなど訓練いていく必要があるんじゃないかなと思います。そういうのは、備えだと思います。そういう備えは1円玉貯金で構わないと思うんです。1円でも5円でも10円でも少しずつ積み重ねていくことが大事だと思って私はこの本を書きました。

 頭の隅に置いておいて、何かあった時に引っ張り出してきて、ここに何か書いてあったわと見てもらえば。本棚に入れておいて、必要な時にり出してもらいたいなと思っています。

 この間言われたのですが、退職した時の手続きについて、その時に受けた講座ではわからなかったけれど、2年前にこの本があったらわかった。今度から若い人に教えてあげられるわって。

 大体システムはわかりにくいものなので、ある部分を噛み砕いて説明して流れを作っていって自分たち自身の用意・自衛策が必要なんだと思います。
「のたる」読者へのメッセージ

――「のたる」読者、これから『男おひとりさま術』を読む方に一言お願いします。

中澤:老後に何が一番大切かというと、ちっちゃなことの積み重ねの備えじゃないかと思うんです。知識の備えであったり、健康の備えであったり。心の備え、あとはお金の備えですね。特に若い人はなかなかできないことだけど、少しずつやっていくと後が楽になるかなと思います。今からでも早くないです。

【インタビュー=のたる編集長・みやざわさかえ/撮影=塩田涼】

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著者インタビュー『男おひとりさま術』中澤まゆみさん(前編)

『男おひとりさま術』の出版情報

書評『おとこおひとりさま術』~企業に無能化された男のリハビリ・マニュアル

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